小学生 絵のない絵本
大竹です。小学生クラスで取り組んでいる、アンデルセンの『絵のない絵本』の絵が完成してきました。アンデルセンとはデンマークの童話作家です。人魚姫やマッチ売りの少女など、皆さん一度は読んだことがあるかと思います。絵のない絵本は、童話の短編集のようになっており、貧しい若者の元へ毎晩月が現れて、各地で見聞きした出来事を語ってくれる、というお話になっています。一番人気は二十八夜の白鳥の話でした。
「海は凪 いでいました」と、月が言いました。「水は、わたしが帆走 っていた澄 みきった空気のように、透 きとおっていました。わたしは海面よりもずっと下に生えている珍 しい植物を見ることができました。それらは森の中の巨木 のように、幾尋 もある茎 をわたしのほうへさし上げていました。魚がその頂の上を泳いで行きました。空高く野の白鳥の群れが飛んでいました。その中の一羽 は翼 の力がおとろえて、だんだん下へ沈 んで行きました。その眼 はしだいに遠ざかって行く空の旅行隊 の後を追っていましたが、翼をひろくひろげて、ちょうどしゃぼん玉が静かな空気の中を沈んで行くように、沈んで行きました。やがて水面に触 れました。頭をそらして翼のあいだにつっこむと、おだやかな湖に浮 ぶ白い蓮 の花のように、静かに横たわっていました。やがて風が吹 いてきて、きらきら輝 く水のおもてに波をたたせました。すると、水のおもては、まるでエーテルのようにきらめいて、大きな広い波となってうねりました。そのとき、白鳥が頭を上げました。きらきら光る水が、青い火のように白鳥の胸や背を洗って飛び散りました。暁 の光が赤い雲を照らしました。白鳥は元気を取り戻 して立ち上がると、のぼりくる太陽のほうへ、空の旅行隊の飛び去った青みがかった岸辺 をめざして飛んで行きました。ただひとり胸に憧 れをいだいて飛んで行きました。青い、ふくれあがる波をこえて、ひとりさびしく飛んで行きました」――
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