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やさしき巨影

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。それぞれ違った場面の象を描かれています。 ・左の作品 乾いた大地に風が走り、砂がふわりと舞い上がるような空気感がまず印象に残ります。象たちの体には細やかに色が重ねられ、大きく堂々とした存在感がしっかり表現されています。一本の線や一つの影がその像が重ねてきた年月”を示しており、鑑賞者に豊かな生命の深さを想像させます。荒々しさではなく、静かな強さとしての重みが伝わってきますね。 この3頭は親子なのでしょうか、二頭が鼻を寄せ合う姿がとても温かい気持ちにさせてくれます。象達の柔らかい目元の描写が、作品全体の空気を決定づけています。まなざしが穏やかで、どこか思索的にも見えるため、「この象は何を感じ、どんな世界を見ているのだろう」と思いが巡りますね。 背景は大胆にピンボケしたように柔らかくぼかされ、遠景の情報量をぐっと減らすことで主役である象たちがより手前に浮かび上がるように見えます。(よく見ると奥にも二頭の象が寄り添うように描かれていますね!)暖色の空気の中で歩む姿が、力強くも優しい余韻を残しています。 ・右の作品 こちらの作品では、油彩ならではのナイフを使った厚塗りが魅力的で、絵具の盛り上がりそのものが象の肌の質感として生きています。乾いた皮膚のひび割れや、ごつごつとした重量感が見事に再現されています。 草原で食事中なのでしょうか、その穏やかな時間の流れがキャンバス越しにも伝わってきます。左の作品では空に動きをつけていましたが、こちらはあえてフラットな空にすることで、下部の草地や象の体の描き込みがより際立ち、画面全体のバランスが美しく整っています。 画面全体からゆったりとした時間が流れているような静けさがあり、見る人の心を同じ時間に引き込んでくれるようです。キャラクターとしても象は温厚なイメージで描かれる事が多いですが、こちらの作品ではその印象がより柔らかく、親しみを伴った形で表れていますね。 ただ大きく、ただ強いだけの存在ではなく、その奥に潜む穏やかな気配や眼差しを丁寧に拾い上げていることで、作品は単なる動物画を超え、どこか精神的な穏やかさを鑑賞者へ手渡すような存在になっています。

記憶を纏う絵画

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  永瀬 油彩+布・刺繍糸 大竹です。今回ご紹介させていただくのは、永瀬さんのコラージュ作品です。キャンバスの上に油彩と布・刺繍糸が組み合わさっています。 画面にまず強く印象を与えるのは、鮮烈な赤の背景。その中央に描かれる人物のまなざしは静かでありながら、周囲を彩る断片的な布地や糸と呼応し、複雑な感情の揺らぎを漂わせています。使用されている布や刺繍糸は、永瀬さんのかつてのお気に入りの洋服の一部であり、絵の素材であると同時に、かけがえのない個人的な記憶そのものでもあります。 絵画という虚構の世界に、思い出を宿した実際の「モノ」が貼り込まれることで、画面には二重のリアリティが立ち現れます。描かれた人物の表情が誰かを思わせるようでありながらも、布地が持つ物質感によって、個人的な日常や時間の経過が呼び起こされるのです。それはまた、毎年増えていく服に囲まれながらクローゼットをのぞいたときに感じる「過ぎ去った時間への愛着」と「積み重ねられていく日々」の感覚にも重なります。 背景の赤は、そのような断片的な記憶や素材を一つの世界に収める役割を果たし、画面に力強い統一感を与えています。絵画と現実、記憶と現在とを交差させ、見る者に「自分自身の思い出」を呼び覚まさせる魅力を放っているかの様です。

それぞれの日常を

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。 浅草の居酒屋の一場面が、実に温かな眼差しで切り取られています。画面に常連が集う古き良き居酒屋の空気が漂い、赤ちょうちんや色褪せた看板、油で黒ずんだ外壁や庇の質感にまで、時間の積み重ねが感じられますね。華やかすぎず、むしろ少し煤けた色合いでまとめられている点が、街場の居酒屋特有の「油で汚れた生活感」を生き生きと伝えています。 また、そこにいる人々は表情を描き込まれていないにもかかわらず、椅子に腰かける姿勢やグラスを掲げる仕草、談笑の身振りなどから、それぞれの感情や会話の気配が伝わってきます。お客さんたちの「今日はここで一息つこう」という安らぎや、店員さんの手際よい立ち働きが、絵全体に小気味よいリズムを生み出しています。視線を移すたびに、一人ひとりの物語が立ち上がるような豊かさが魅力的ですね。 さらに、画面手前を横切る野良猫の存在が作品にユーモアと遊び心を与えています。人間の営みと並行して街の生き物たちもまた日常を紡いでいることを、さりげなく示しているようです。居酒屋という舞台に猫が加わることで、画面がふっと和み、観る者に微笑みを誘う効果を発揮しています。 全体として、筆致の緩急のつけ方が巧みで、背景や建物の重厚な質感と、人々や小物に宿る軽やかな躍動感が響き合っています。単なる風景描写にとどまらず、下町に流れる時間や人々のぬくもり、そして生活の匂いまで描き込まれた作品といえるでしょう。  

季節を描き、心を映す

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。 まずは左のひまわりの作品。ペインティングナイフを用いて厚く塗り重ねられた絵の具の質感が、力強い陽光と大地の熱を感じさせ、画面全体に生命力と躍動感が漲っています。背景には大胆な筆致で様々な色が重ねられ、絵の具の盛り上がりやかすれが、風や光の動きを感じさせるような、抽象的な魅力をもたらしています。 また、花々の構図には物語性が感じられます。画面下部のひまわりたちは、それぞれが異なる方向を向き、風に揺れながら自由に咲いているようにも見えます。その中で、最も背の高いひとつだけが、あたかもその下に咲く花々を見守るように、やさしく視線を落としているのが印象的です。 通常、ひまわりは太陽を見上げる花ですが、このひまわりはまるで太陽ではない”誰か”に向かってその顔を向けているかのようです。まるで年長者が若者たちを見守っているかのように見えてきませんか?毎週お孫さんがご自宅に遊びにいらっしゃると伺いましたが、もしかするとそうした日常の温かな記憶が無意識のうちに作品に反映されているのかもしれませんね。 筆とナイフを自在に使い分け、感情と観察を巧みに織り交ぜた表現は、長沼さんの絵画歴の豊かさを裏付けるものです。ひまわりという身近な題材から、見る人の想像力をかき立てるストーリーを生み出している点に、深い魅力を感じます。 そして右の作品は、岩手県にある小岩井農場の一本桜を描いています。画面中央に佇む満開の桜が、残雪を抱いた山々と澄んだ青空を背景に、堂々と咲き誇っています。自然の雄大な空間を感じさせつつも、その中で桜の存在がしっかりと主張されているのは、絵の具の重ね方に工夫が凝らされているからでしょう。花の部分には、やや厚みを持たせるように絵の具が乗せられており、遠景でありながらしっかりとした質感と存在感を放っています。 空は丁寧なグラデーションで美しい真っ青に仕上げられ、空の青と、手前の木々や地面の緑、そして桜の柔らかなピンクが絶妙なバランスで画面を彩ります。こうした色彩の調和が、春の訪れを鮮やかに印象づけています。 また、遠くにそびえる山肌の描写も魅力的ですね。残雪がまだ多く残る山の陰影や稜線の表現には、長年絵筆を握ってきた長沼さんならではの観察力と描写力が感じられます。実景を丁寧に見つめ、その印象を一つ一つ画面に再...

遊び心を添えて

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは長沼さんの油彩作品です。時には2枚3枚を同時進行で描かれる事もあり、エネルギッシュに制作されています。 左側の作品は茨城県の笹間市にある石切山脈を描いています。山脈や岩肌といった、ゴツゴツしたものは油絵にぴったりの題材ですね。岩肌の不思議な縞模様は自然に出来たものだとは信じがたいデザイン。こうした風景に魅力を感じ、作品にしようとする感性も、長年磨かれたものなのでしょう。ペインティングナイフで絵の具を盛り付ける事で、削られた山肌を表現しています。水面は鏡のように風景を映しており、その表面は静かに揺らいでいます。荒々しい山肌との対比にもなっていますね。空もまた柔らかい色合いで薄い層を重ねる様に塗り重ねられており、平面の絵の中でも奥行きを感じることができます。特にこうした絵の具を厚く乗せた場合は、絵の具を薄くして視線を逃す先(抜け感)があるとバランスも良くなりますね。迫力がありながら、圧迫感や息苦しさはなく、そこにある雄大な自然の積み重ねを受け取ることができる1枚です。 右側はシロクマがいることから北極の地であることが伺えます。一番大きなシロクマは光を受けて金色に輝いており、極寒の寒さのなかでの生命がもつ暖かさが滲んでいるようです。奥には仲良く並ぶ2体のクマ達。毛で覆われふっくらとした愛らしい体と、それは過酷な地で生き抜くための構造である事の2面性、いわゆるギャップを鑑賞者に与える事でしょう。氷の冷たさも掠れた絵の具で表現し、我々人間が安易に踏み込めない厳しさをも感じさせます。しかし、そんな中で動物たちのなんともいえぬ朗らかな表情がまた魅力的ですね。よ〜く見てみると、シロクマ以外にももう1匹顔を出しています。作者の遊び心が伺えますね。 制作途中、つまらないからと原色に近い激しい色を思い切って入れ、それを下地として滲ませるように絵の具を重ねています。(熊の周辺の赤などがわかりやすいでしょうか)こうした急な舵取りもまた、油絵ならではですね。

アクリルで描き出される自然

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大竹です。今回ご紹介させて頂くのは平井さんのアクリル作品です。チケット制で月に1回、月末に制作されていますがアクリル絵の具の速乾性も相まってかなりのスピードで作品を仕上げられています。 左の作品は白と朱色のポピーを描いています。鮮やかな朱色と柔らかな白の花々が、キャンバスの上でまるで命を宿したかのように咲き誇っています。近くで見ると大胆なたっちで描かれており、離れて鑑賞する事でそれらがまとまり観る者の心を2度掴む事でしょう。ポピーの葉や茎には白が混ぜられた色が使われていますが、これによりうぶ毛のような細かい棘を表現しています。流石の描写力ですね。鮮やかな花々を支えるように葉も様々な緑で描かれており、その色彩の豊かさに作者の技術が光ります。 右の作品。広がる空と流れる川、その奥に佇む山々まで、すべてがのびやかな筆使いで描かれており、まるで風が吹き抜けていくような爽やかさを感じさせます。長時間露光して撮られたかのような軌道を描く空は、元あった空を「なんだかつまらないから!」と大胆に塗りつぶし、描き直したもの。それによってまるで空(さらに向こうの宇宙まで)と大地の時の流れの差異のようなものまで感じさせるようです。 遠くに見える赤い橋がアクセントとして画面を引き締めるとともに、手前から奥へと向かう視線誘導の手助けもしています。描かれたもの全てが無駄のない1枚となっていますね。 ちなみに右の風景がは木製パネルに直接描かれています。アクリルならではの使い方ですね!アクリルを使われる方は一度パネル描きも試してみては如何でしょう。紙とはまた違った感触で面白いですよ!

南と北の光景

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長沼さん 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。 左の作品は沖縄の渡嘉敷島、右の作品は北海道の 道南部乙部町の館の岬を描いています。日本の最南と最北の風景ですね! まずは左の作品。海の底が透けるほどのクリアな海と雲ひとつない空の青が美しい光景です。沖縄とわざわざ場所を描かなくても、我々日本人が見れば沖縄だと分かりますね! 船がこちらに向かってきており、足跡を残すように水面が波打っています。静止画ながらも、船の動きや波のうねりを感じさせますね。手前に向かってくる構図はちょっと珍しくも思います。(船の形から、奥へ向かっていく構図の方が多い)油絵の具はグラデーションが最も作りやすい画材ですので、その性質を活用した色の変化を沢山作られていますね。青い海と空を区切るように小さな山(この大きさですと島でしょうか?)が描かれています。空や海をグラデーションで仕上げている反面、こちらは違う色の粘土を練り合わせたかのように絵の具を入り組ませ、岩肌と緑を表現しています。絵の具の使い方の対比も面白いですね。 そして右の作品。北海道といえば雪のイメージがありますが、こちらは切り立った崖が立ちふさがっています。まるでグランドキャニオンのような自然の塊と、人工的な町が同じ画面の中にあるのが不思議ですね。地層の横線と、街中にある電線の縦線が重なり合う構図も図形的な面白さがあります。縞模様の様な地層は、ペインティングナイフを使用してザラザラとした質感が作られています。道路は年月を感じさせる汚しが入れられていますが、奥にある東洋のグランドキャニオンはそれよりも更に年月が積み重なって出来ています。その年月との対比もある構図となっていますね。町や崖を強調するため、空はあえて薄くシンプルに作られています。これが左の作品の空の様に濃い青ですと、少々強すぎる画面になってしまっていたでしょう。 意図されたものではないのでしょうが、南と北、海と大地の対比となった2作品でしたね。全く異なる風景でも、色使いやタッチから同じ作者である事が分かるのが絵画の面白いところですね!

川崎市美術展入賞作品展

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永瀬 油彩 大竹です。現在開催されている川崎市美術展の入賞作品展で大人クラスの永瀬さんの油彩画が展示されています。永瀬さんは初出品の2枚のうち、1枚は入選、1枚は入賞の快挙!ぜひ実物をご覧になって下さい。シンフォニーホールは川崎駅から直通、ラゾーナの左側の通路からつながっております。 私も先日再び足を運びましたが、全体的に明るくポジティヴな作品が多い様に思いました。永瀬さんのメメント・モリな作風が他の作品との並びの中でアクセントにもなっていて面白かったです。   先週の入選展の様子

市美術展入選

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  永瀬 油彩 大竹です。現在ミューザ川崎にて大人クラスの永瀬さん・学生クラスのマホさんの作品が入選展にて展示されています。永瀬さんはこの後の入賞展でももう1枚展示予定です(今回初応募で2点応募してそれぞれが入選・入賞!快挙です!)ので、そちらもお楽しみに! (しかし、今回は学生クラスは1人も入選ならず…今回は題材にあまり口出しせず、学生の好きな様に描かせてみようと思っていましたが、次回はまたガンガン口出しさせて貰お!) マホ アクリル画

赤ら顔のオヤジたち

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柳谷 アクリル  大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、柳谷さんのアクリル作品です。居酒屋で撮った知人のお写真を元に制作されています。大きなサイズで製作されていましたので、半年はかかっていたでしょうか。納得のいくまで何度も何度も塗り重ね、アクリル絵の具ながら油絵の様な重みになっていました。 仲良く肩を組んでカメラにピースしている姿がなんともお茶目で微笑ましいですね。居酒屋で撮られているだけあり、二人とお酒がすすんだお顔になっていますね。笑 この酔いが回った赤い肌の色の表現に特に苦労されていました。その人の生きた年月の重みを感じさせるシワや頬の膨らみをよく観察して描いていますね。しかし、そこにくたびれた印象はなく、まだまだ気力も体力も漲っている、エネルギー溢れる人たちの内面が溢れている様に思います。柳谷さんがこのお二人の事をよく知っているからこそ描けるものなのでしょう。 洋服も、背景に合うように色や模様をアレンジして描かれています。服の素材によって皺や影の入り方も変わってきますので(薄いシャツは細かく影が出来やすく、厚手の布はシワの間隔が広くなるなど)それらもしっかりかき分けていく必要があります。右の方の、緑の服の影を単純に濃い緑にするのではないく、背景のオレンジを入れて変化をつけると共に、全体を馴染ませています。 これだけの時間と熱意を持って描いてくれる友人を持つ人は、この世界で一体どれだけいるのでしょうか? 実はこれでもまだ、ご本人的には納得いってないそう。アクリルはいくらでも加筆が出来てしまうので、やめ時が見つからず永遠に描いてしまうので一旦辞めます、との事でした。今はやめ時を見極める必要のある水彩画に戻り、風景画に挑戦されています。様々な題材に挑戦される柳谷さんの次回作もどうぞお楽しみに!

夏、外へ行こう!

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長沼 油彩  大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。こちらは長野県の上高地にある河童橋を描かれています。もしかしたら夏休みに行かれた方もいるのではないでしょうか? 気持ちの良い青空に底が透ける美しい川、まだ白い雪が残る山の前を横切る河童橋。縦構図で描く事で空間を大きく捉え、見る人を風景の中へ引き込みます。河童橋は描くのに苦労されたそうですが、妥協せず描き切った事で周りの雄大な自然に負ける事なく主役として画面を引き締めてくれています。川底も油絵の特性を生かし、オイルで薄く解いた絵の具を少しずつ重ねて塗っていきました。瓦の石は、最初は城壁の様にぴっちりと綺麗に並んでしまっていたのを、自然に転がった石になるよう形をランダムにしたり、重なりを作っています。(自然物を規則正しく描きすぎてしまう方は少なくなく、そういった方は普段の生活での整理整頓がお上手な方なんだろうなぁと、大雑把な私は思ったりしてしまいます…笑)川に落ちる濃い影は夏の強い日差しを感じさせてくれます。山々の緑も美しいですね。普段目にする木々も、よく見てみると様々な色合いを持っている事が分かります。こちらも、暗い部分は思い切って濃い影を入れて葉っぱの塊感を出していますね。 こうしてブログ掲載用の小さいサイズで見ると、実物を近くで見ていた時とはまた違った見え方がしますね。細部が見えなくなってしまいますが、画面全体を捉えやすくなります。手前の川から奥に吸い込まれ、後ろの山々に目がいく視線誘導の流れも分かりやすいですね。 非常に活力のある、見た人を外に連れ出してくれそうな1枚です。「外にはこんなに綺麗で楽しくて魅力的な場所があるんだから、元気な時に外へ行きなさい!」と、絵が訴えている様です。インドア派の私も、眺めているうちになんだか外へ背中を押されている気持ちになってきましたよ!

こちらに向かってくるような

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  長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。立派な桜が続く道の左手には田んぼが見えており、田舎の隠れ名所の様にも見えてきます。こちらは色々な場所を参考にして作られた風景なので、この絵の中にしか咲いていない桜です。 私を見て!と言わんばかりに咲き誇る桜達の勢いは、画面の向こうから花びらがこちらに舞ってきそうなほど。仄かなピンク色の花は、影にピンクや紫色を入れ、光の部分はほぼ白い色を入れる事で表現しています。花びらを塊としても捉え、明暗を意識して描かれています。その立体感により、画面から溢れそうなほどの存在が作られているのでしょう。桜のピンクと、その隙間から覗く空色の組み合わせも綺麗ですね。うねるような立派な幹は表面が苔むしており、長い樹齢が一目で分かりますね。ずっしりとした重みもよく表現されています。 地面には散った花びらが少し落ちており、満開から少し経った時期なのでしょうか。いずれ桜が散って行き、この道がピンクの絨毯で埋め尽くされる光景が想像できますね。桜を立体的に描いた分、地面は引き立て役としてフラットに、絵の具ものせすぎないようセーブされています。 長い期間制作を続けていると、あれも描きたい、これも描かなきゃと色々な欲が出てきてくる事でしょう。その中で、一番描きたかったもの・表現したかったことに対して必要な要素なのか?主役を殺してしまわないか?見失わない事が大切です。そうして見てみると、長沼さんのこちらの作品は主役がハッキリと定まっていますね。

湿度のある寂寥感

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  永瀬 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、永瀬さんの油彩作品です。幼い頃の自分をモデルに描いています。ちょっぴりムスっとした表情は、何か嫌なことでもあったのでしょうか? 下地を活かした色づくりによって、絹に書かれた日本画の様な質感にも見えてきますね。絵の具のかすれが美しく、素材そのものを楽しみながら描かれているのが分かります。洋服の肩辺りの下地の透け具合など特に味わい深く思います。黒を使った輪郭線の入れ方もお上手ですね。輪郭をぼかして曖昧にする部分と、輪郭を際立たせる部分のリズムが心地よく、シンプルな画面ながら退屈さを感じさせません。 後ろのタンポポの綿毛はシャープな線を出す為にクレパスで加筆されています。茎の部分は縦線が強調されない様、下の方はぼかしてあります。モチーフや色合い、タッチによって、湿度のある寂寥感を見た人に与えます。 綿毛は種子を運ぶ為に遠くへと飛んでいきます。作品に描かれるモチーフには全て意味が込められています。浮かない表情のこの子供は、これから遠い場所へ行く事を憂いているのでしょうか?別れの暗示にも思えますし、それとも、今は晴れない気持ちでも、いつか伸び伸びと綿毛の様に広い世界へ飛んでいけるというメッセージなのでしょうか?見る人は自分の幼少期と重ねたり、自分の子供と重ね合わせてこの絵の子どもの気持ちになっていくのだと思います。

尾瀬を歩く

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平井 アクリル 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、平井さんのアクリル画です。木製パネルにアクリル絵の具で直接、尾瀬の風景を描いています。尾瀬の広大な山地湿原は、福島・群馬・新潟の3県にもまたがるそうで、日本百景にも選定されています。 秋の穏やかな日差しと、駆け抜ける涼しげな風が画面からも伝わってくるようですね。目に見えない日差しを表現する為には、光と陰が重要となってきます。平井さんの作品では、橋に落ちる光と影が見事に表現されています。眺めていると、心地よい日差しの中を歩いている時の温度や匂いが思い起こされるようです。 葉っぱの細かな点描は筆先を細かく先割れさせて塗り、地面の草木や橋の木目はドライブラシで表現しています。巧みな筆使いにより、それぞれの質感を描いています。周りの草木も黄色やオレンジ、青といった様々な色を取り入れ、色彩豊かに表現されています。普段なら特に気に留めないような草木でも、制作者を通じて描かれたものはとても魅力的に見えてきますね。 橋を歩く2人の白と赤の服も、画面の中で良いアクセントになっていますね。サラッと描かれている様に見えますが、人が歩いている自然なポーズも、実はかなり難易度が高いもの。人の仕草をよく観察し、描いているのでしょう。 穏やかな光景は作者の人柄が表れているかのよう。お散歩に出かけたくなるような1枚です。  

80年の蓄積

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。この不思議なトンネルの様な場所は、北海道稚内市の稚内港にある北防波堤ドームです。樺太航路を高波から守るために1931年から5年かけて建築されたそうで、設計者は当時26歳の若者だったとか。高さは役14メートル、長さは427メートルもあるそうです。70本にも及ぶ柱が並ぶ姿は圧巻です。 滑らかに削られた天井には、80年の月日の経過を感じさせる為に幾重にも絵の具を塗り重ねられています。床や柱も同じ様に、古きものの深みを出すために様々な色を作り、試行錯誤しながら絵の具を置かれていきました。岩や建物などのずっしりとした重みを出すには、やはり影をしっかりと濃く入れ、明暗差をつける事が重要となってきます。長沼さんの絵では、天井や柱の明暗が縞模様の様に続いており、模様的に観ても面白いですね! 奥の空はシンプルに青空にしたお陰で、北海道の広大な大地と空を感じさせてくれます。中で犬の散歩をさせているのは地元の人なのでしょう。涼しげな格好から、季節は夏であることも読み取れますね。人が居る事で、その建物の大きさもより実感を持って感じる事ができ、かつてはこの小さな人間が、この大きなドームを作ったのだと改めて感心させられますね。 この不思議な光景も、日本にあるのだと思うと感慨深いですね。GWが明けたばかりですが、北海道へ実物を行きたくなってしまいますね!

暗い空に浮かぶシルエット

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永瀬 油彩 大竹です。本日ご紹介させて頂くのは、永瀬さんの油彩作品です。佐賀県にある唐津湾のブルーアワーを描かれています。この画面の左側には唐津城が建っているそうで、お城ではなくあえて無人島(左側が鳥島・右側が高島・真ん中奥にうっすら見える平たい島が神集島というそうです)の方へ目を向けているところが永瀬さんらしいチョイスですね。無人島と左の灯りが点いている有人の家屋も対比されているのでしょうか。 暗い空の奥はぼんやりと明るく、無人島のシルエットを浮かび上がらせています。暗い空は幾重にも色を重ねて濃さを出しているので、黒に近い色ながら青や緑といった色彩を感じさせます。海の方にはうっすら紫を入れたことで、空とはまた違った色の魅力がありますね。暗い風景は、いかに暗い部分に魅力を作れるかがポイントとなっていきます。下地作りから色作りを楽しんで作られている永瀬さんの、偶然と計画性が絶妙なバランスで作品を彩っているようです。 ご自身の印象に残った光景を出力して描かれているので、作者が見て感じた風景を、作品を通じてそのまま感じ取ることができます。下地に砂のマチエール材を混ぜ込んであるので、それらがノイズの粒子の様にも見えてきますね。昔の写真の様にも思えるのは、このマチエールの効果なのでしょう。永瀬さんの画題とも相性の良い材料ですね。 次の作品ではどんな風景を見せてくれるのでしょうか。楽しみにしております。

イグアナとモリス

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柳谷さん アクリル・ミリペン・水性ペン等 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、大人クラスの柳谷さんの作品です。こちらは白のアクリルを下地に、ミリペンでイグアナを描き、水性のペンで着彩されています。上下の飾り枠の花はウィリアム・モリスの花柄や、アール・ヌーヴォーの自然をモチーフとした曲線を思わせます。 イグアナの細かい鱗のような模様を、1つ1つミリペンで描いています。気の遠くなる様な作業でしたが、ご自宅にも持ち帰って制作されていました。柳谷さんはどの制作も楽しんで取り組まれていますので、きっと苦行に感じないのでしょう(多分…)。点描の密度を変えて立体感を出し、更に上から水性ペンで陰影を加えて(水性のアクリルが地になっているので、布キャンバスにも水性ペンが乗るようになります)イグアナの皮膚の厚さや重さを表現しています。少し眠たげにも見える表情が愛らしく、普段あまり目にすることのないイグアナの魅力を伝えてくれる1枚です。 日々色々な画材を購入されては実験し、様々な表現を探求されているその姿勢は、美術系の人間全員が学ぶべきものですね。私にも爪の垢を分けて貰いたく思います。 イグアナという渋いチョイスと、モリス的な装飾で上下に枠を作るアイデアが面白いですね!今回は四角いキャンバスで制作されていましたが、丸いキャンバスで制作するのも合いそうです。

積み重ねの岩壁

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  長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは長沼さんの油彩作品です。この天にも昇る岩壁の圧巻の光景は、山形県の瓜割石庭公園です。30mの岩壁に囲まれた場所は、音の反響の良さからなんとライブ会場にされる事もあるそうです。そう思うと、岩肌達の表情も活気に満ちている様にも見えてきますね。 左上の手前に見切れている崖はパレットナイフでたっぷりと絵の具を乗せてマチエールを効かせ、ヤスリのようにざらざらとしています。この部分がほぼ目の前にあるかのように感じられるので、より奥に聳え立つ岩壁が大きく、迫力あるものに見える構図となっています。真ん中に立つ観光客と比較すると、よりその大きさが実感できるでしょう。 何百、何千、ひょっとしたら何万年の積み重ねからできた地層の色合いを、油彩の奥行きある風合いで表現しています。何層も色を重ね、深みと重みを出す事ができる油絵ならではの色合いですね。崖の上から染み出した様に縦模様に色が変化しており、そこに走る横線は恐らく人の手によって石が切り出された跡なのでしょう。赤〜黄色の強く鮮やかな色合いは蓄積されたエネルギーを内包しているかのようです。この岩壁の存在感をより重く印象付けるために、ハッキリとした色を使っているのでしょう。しかし、力が強すぎると圧迫感を与えてしまう場合もあります。それを和らげるため、空は絵の具を乗せすぎないようフラットに仕上げられています。青空も切り取られたパズルのピースの様にも見えてきますね。空さえ小さな破片に見える光景が面白いです。 また細かい部分ですが、周りに生い茂る草木の種類もしっかりと観察し、描かれています。隅々まで手を抜かず制作されていますね。手前〜中間は明るく、奥は暗く作ることで、広い画面にもメリハリを与えてくれています。 ちなみに、この石切場から切り出された石材で作られたのが旧高畠鉄道高畠駅舎だそうです。壁の色が石切場と一緒ですね!何万年もの積み重ねで作られたこの岩を、人はツルハシで切り崩していったのですから、両者とも凄まじいパワーです。遠い地球の月日と、人類の発展に思いを馳せてしまう1枚ですね。

森は何を表している?

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  大竹です。今回ご紹介させていただくのは、長沼さんの油彩作品です。 新聞に掲載されていた群馬の谷川岳の写真を参考に描いています。(最近は新聞掲載写真を描くのがブームだそう)油絵らしく絵の具をたっぷりと使用された岩肌や森の質感は迫力満点。濃いめの緑に引き立てられた、鮮やかな緋色や黄色が見る人に強いインパクトを与える事でしょう。雲と青空が模様的に捉えられているのも面白いですね。空は斜め、山は縦、森は横方向へのタッチが組み合わされており、筆運びの変化も楽しめるでしょう。また、太陽そのものが描かれていなくとも、存在を感じさせるだけの光が描かれています。作品をグレースケールに加工させて頂きましたが、白黒で見ても山肌の光がよく感じられるかと思います。絵を描く際、色合いだけではなく、色の明るさも意識して描かれていくと、メリハリのある画面を作る事が出来るでしょう。こうして見ると、上面の空は明るく、下面の森は暗めに作られており、その明暗差でも画面が引き締まっているように見えます。 そしてこちらの作品は屋久杉の森と鹿を描かれています。(大きいキャンバスでしたので、写真も大きめに掲載させて頂きました。)迷路にも見えそうなほどうねり、入り組む木々は光を遮り、昼間なのに薄暗い光景は人々に畏怖の念を与えます。人の手が入らず、自然にこの形を作る植物のなんと面白い事でしょうか。ところどころに入る赤色は緑の補色の役割を果たしつつ、なんだか木々たちに流れる血流、命の源にも思えてきます。奥から流れる川の勢いと、じっとこちらを見つめる鹿達との動と静の対比も画面に不思議な雰囲気をもたらしています。苔に覆われた岩の緑の豊富な色数も見事ですね。湿り気を帯びた様子がよく伝わってきます。苔が長い時間をかけて岩を覆うように、時間をかけて絵の具を塗り重ねていったのでしょう。 3頭の鹿は三角の構図になる様配置され、画面を引き締める役割を持っています。その視線は全て画面側(こちら側)に向けられています。本来ならば外敵でもいない限り、自然のうちに3頭が同じ方を向くということはないでしょう。あえてこちらに視線を向けている、鑑賞者が逆に作品の中から見られているのです。まるで人を森の奥へと導いているかのよう。 一見、入り組んで先の見えない道に見えても、どこかに先駆者はいるものです。それが森の様に何十年何百年と続いているも...

人を想う

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  大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、永瀬さんの油彩作品です。 ある故人を想い描かれたそうで、真ん中の女性の周りには沢山の人が集まっています。 中心の女性を自身に見立て、頭の中にある記憶を思い起こしているイメージで描かれているそうです。中には楽器を持っている人も見受けられます。右手前に写真を持っている人が居ますが、その写真の方を想い人々は集っているのでしょう。中には楽器を持っている人も見受けられます。楽しげにも見えるその様子から、故人の生前の人となりが伝わっってきますね。 また、女性の瞳に注目してみますと、右目だけ右を向いています。絵画や映像、漫画などにおいて、右側は過去・左側は未来へ時間の流れを表すそうです。過去を表す右目が右側を向いているのも、過去を思い出し、見つめているのでしょう。 背景にはスポットライトが設置され、紫色のライトが点灯しています。明るくしているというよりも、むしろ暗くなっている逆転したライトは一体?人の頭の中ですから、現実とは違うという演出なのでしょうか。永瀬さんの作品は、絵画を読み解く楽しさもありますね。永瀬さんは自身の記憶や感情をテーマに描かれることが多く、その作者の頭の中を覗かせて頂いているからでしょうか?是非みなさんも、作品から作者や物語を読み解いて見てください。