南と北の光景
長沼さん 油彩
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。左の作品は沖縄の渡嘉敷島、右の作品は北海道の道南部乙部町の館の岬を描いています。日本の最南と最北の風景ですね!
まずは左の作品。海の底が透けるほどのクリアな海と雲ひとつない空の青が美しい光景です。沖縄とわざわざ場所を描かなくても、我々日本人が見れば沖縄だと分かりますね!
船がこちらに向かってきており、足跡を残すように水面が波打っています。静止画ながらも、船の動きや波のうねりを感じさせますね。手前に向かってくる構図はちょっと珍しくも思います。(船の形から、奥へ向かっていく構図の方が多い)油絵の具はグラデーションが最も作りやすい画材ですので、その性質を活用した色の変化を沢山作られていますね。青い海と空を区切るように小さな山(この大きさですと島でしょうか?)が描かれています。空や海をグラデーションで仕上げている反面、こちらは違う色の粘土を練り合わせたかのように絵の具を入り組ませ、岩肌と緑を表現しています。絵の具の使い方の対比も面白いですね。
そして右の作品。北海道といえば雪のイメージがありますが、こちらは切り立った崖が立ちふさがっています。まるでグランドキャニオンのような自然の塊と、人工的な町が同じ画面の中にあるのが不思議ですね。地層の横線と、街中にある電線の縦線が重なり合う構図も図形的な面白さがあります。縞模様の様な地層は、ペインティングナイフを使用してザラザラとした質感が作られています。道路は年月を感じさせる汚しが入れられていますが、奥にある東洋のグランドキャニオンはそれよりも更に年月が積み重なって出来ています。その年月との対比もある構図となっていますね。町や崖を強調するため、空はあえて薄くシンプルに作られています。これが左の作品の空の様に濃い青ですと、少々強すぎる画面になってしまっていたでしょう。
意図されたものではないのでしょうが、南と北、海と大地の対比となった2作品でしたね。全く異なる風景でも、色使いやタッチから同じ作者である事が分かるのが絵画の面白いところですね!
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