森は何を表している?

 

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、長沼さんの油彩作品です。
新聞に掲載されていた群馬の谷川岳の写真を参考に描いています。(最近は新聞掲載写真を描くのがブームだそう)油絵らしく絵の具をたっぷりと使用された岩肌や森の質感は迫力満点。濃いめの緑に引き立てられた、鮮やかな緋色や黄色が見る人に強いインパクトを与える事でしょう。雲と青空が模様的に捉えられているのも面白いですね。空は斜め、山は縦、森は横方向へのタッチが組み合わされており、筆運びの変化も楽しめるでしょう。また、太陽そのものが描かれていなくとも、存在を感じさせるだけの光が描かれています。作品をグレースケールに加工させて頂きましたが、白黒で見ても山肌の光がよく感じられるかと思います。絵を描く際、色合いだけではなく、色の明るさも意識して描かれていくと、メリハリのある画面を作る事が出来るでしょう。こうして見ると、上面の空は明るく、下面の森は暗めに作られており、その明暗差でも画面が引き締まっているように見えます。




そしてこちらの作品は屋久杉の森と鹿を描かれています。(大きいキャンバスでしたので、写真も大きめに掲載させて頂きました。)迷路にも見えそうなほどうねり、入り組む木々は光を遮り、昼間なのに薄暗い光景は人々に畏怖の念を与えます。人の手が入らず、自然にこの形を作る植物のなんと面白い事でしょうか。ところどころに入る赤色は緑の補色の役割を果たしつつ、なんだか木々たちに流れる血流、命の源にも思えてきます。奥から流れる川の勢いと、じっとこちらを見つめる鹿達との動と静の対比も画面に不思議な雰囲気をもたらしています。苔に覆われた岩の緑の豊富な色数も見事ですね。湿り気を帯びた様子がよく伝わってきます。苔が長い時間をかけて岩を覆うように、時間をかけて絵の具を塗り重ねていったのでしょう。
3頭の鹿は三角の構図になる様配置され、画面を引き締める役割を持っています。その視線は全て画面側(こちら側)に向けられています。本来ならば外敵でもいない限り、自然のうちに3頭が同じ方を向くということはないでしょう。あえてこちらに視線を向けている、鑑賞者が逆に作品の中から見られているのです。まるで人を森の奥へと導いているかのよう。

一見、入り組んで先の見えない道に見えても、どこかに先駆者はいるものです。それが森の様に何十年何百年と続いているものだったら尚更に。人生で迷ってしまったらその道に詳しい人に頼ってみる、という当たり前の事を気づかせてくれる様ですね。


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