湿度のある寂寥感

 

永瀬 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、永瀬さんの油彩作品です。幼い頃の自分をモデルに描いています。ちょっぴりムスっとした表情は、何か嫌なことでもあったのでしょうか?
下地を活かした色づくりによって、絹に書かれた日本画の様な質感にも見えてきますね。絵の具のかすれが美しく、素材そのものを楽しみながら描かれているのが分かります。洋服の肩辺りの下地の透け具合など特に味わい深く思います。黒を使った輪郭線の入れ方もお上手ですね。輪郭をぼかして曖昧にする部分と、輪郭を際立たせる部分のリズムが心地よく、シンプルな画面ながら退屈さを感じさせません。
後ろのタンポポの綿毛はシャープな線を出す為にクレパスで加筆されています。茎の部分は縦線が強調されない様、下の方はぼかしてあります。モチーフや色合い、タッチによって、湿度のある寂寥感を見た人に与えます。
綿毛は種子を運ぶ為に遠くへと飛んでいきます。作品に描かれるモチーフには全て意味が込められています。浮かない表情のこの子供は、これから遠い場所へ行く事を憂いているのでしょうか?別れの暗示にも思えますし、それとも、今は晴れない気持ちでも、いつか伸び伸びと綿毛の様に広い世界へ飛んでいけるというメッセージなのでしょうか?見る人は自分の幼少期と重ねたり、自分の子供と重ね合わせてこの絵の子どもの気持ちになっていくのだと思います。
















コメント

  1. パッと見て憂鬱な表情の子供に惹きつけられました。思春期を感じます。背景と服の色合い、溶け込むような表現が素敵ですね。

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