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                   永瀬 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、永瀬さんの油彩作品です。砂状のマチエール素材をふんだんに使い、ザラリとした表面になっております。赤い背景と無表情な二人からは不穏な雰囲気を感じますが、この視線は一体何に向けられているのでしょうか。毛髪のない人の姿とはある種の個性を失っている様にも思えてきます。(私自身が他人を覚える際、顔よりも髪型の方から覚えていくからなのでしょうか?)
永瀬さんの作品のテーマの根底にはメメント・モリが意識されていますが、この作品の人物らもその顔に生気は無く、どこか空虚でもあります。青白い石のような皮膚の中で、唇だけが血が通っているかのように赤く色付いているのも印象的です。何か言葉で伝えたいことがあるのでしょうか。(死人に口無し、と言いますが、この二人ははたして…)人物の顔がそれぞれ半分ずつ見切れている構図も大胆かつ、顔の半分が見えない事で鑑賞する側に名状しがたい不安を与えているようです。半分しか見えない、無い、という事は不完全・欠落を意味しているかの様にも思えます。

顔の影に使われている濃い色の中には黒や藍色を使用し、明るい部分には黄色やピンクを混ぜた白を使用する事で人の生身の肌というよりも、石の様な無機質な印象を与えています。永瀬さんの色づくりは、試行錯誤というにはもっと楽しい実験の様に行われているようにも思えます。描いていくうちにガラリと色が変わる事も少なくありません。すでに描き上がった部分を大胆に変更する事は中々勇気がいるものですが、それすらも作者は楽しんでいるのでしょう。


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