寂寥感

永瀬 油彩 

 大竹です。本日ご紹介させて頂くのは永瀬さんの油彩作品です。当記事下に掲載されている作品は最新作です。それぞれ別の作品として制作されていたものですが、両作品とも同じ河川や対岸を描かれており、並べて鑑賞するのも面白いと思い一緒に掲載させて頂きました。

メメント・モリをテーマに制作を続けられている永瀬さんですが、今回もまた意味深なモチーフの組み合わせとなっています。
1枚目は白いワンピースの老婆が三日月の光を反射する川のほとりに座り込み、目の前にある枯れ木を眺めています。枯れ木もかつては青々とした葉を生い茂らせていたのでしょう、今では沢山の伸びきった枝を残すのみとなっています。それを静かに見つめる女性は、かつての自分をその木に重ねて思想しているのでしょうか。白い布を纏うその姿は、映画『私はゴースト』で自身が死んだ事に気付かず生前の行動を繰り返す幽霊エミリーの様です。空には三日月だけが浮かぶ幻想的なこの景色は、やはり現世よりも彼の世を連想させます。
暗闇に目を凝らす様に絵をじっと見つめると、暗い画面の中に夜空や木、草の輪郭が見えてきます。暗い中にも色を微妙に使い分ける事で、観る人を暗い夜の風景に誘い込む様です。

2枚目にも川が描かれ、対岸には山と枯れ木が連なっています。山の向こうは日が沈みかけており、黄昏が漏れ出ている様です。個人的には、この作品はこれまでの中で最高傑作にもなるのではないでしょうか。乾いた寂寥感は見る人の心を揺さぶり、寂しさと奇妙な安堵感をも与える事でしょう。色を幾重にも重ねていく事で、作者の頭の中にあるイメージをキャンバスに抽出する様に風景が作り出されています。果たして向こう岸の黄昏には何があるのか。
私の余計な文章を頭に入れるよりも、真っさらな状態で鑑賞して頂きたい1枚です。

永瀬 油彩

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