先の先の先まで


 長沼さん 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。
群馬県の碓氷トンネルを描かれています。トンネルの中から外への大胆な構図に一目で鑑賞者を中へと引き込みます。
長年の汚れと湿気で汚れている筈のトンネルの中も、こうして絵になるとそれもまた魅力となるのが絵画の面白い所だと思います。外の光を受けたタイルは宝石の様にも見えますね。上部には赤や青、薄桃といった色が入れられているのも、作者のこだわりや遊び心の様なものを感じますね。手前にタイルの描写を集中させ過密に描いた分、奥の風景は控えめに描かれています。地面を真っ黒に塗ることで、トンネル上部や外の明るさもより際立ちますね。油彩の中で黒の扱いは難しいもので、そのまま使ってしまうと強すぎて浮いてしまったり、他の色を殺してしまったりします。純粋な黒のまま使うのではなく、青や緑といった隣り合う色を混ぜることで緩和したり、逆に強い黒によって明るい部分を引き立てる事もやっているのでしょう。様々な工夫と計画によって作られた1枚となっています。

暗いトンネルの先に明るい出口が見える、というのは困難から抜け出す暗喩の様にも思えますが、長沼さんの作品には出口の先にまたトンネル、その出口の先にもまたまたトンネルが見えてきます。行先の課題を見据えつつ、その解決策も既に講じてあるのでしょうか。
画面の中で独りトンネルを歩く人物は間も無く出口に辿り着きます。この人はどの様な思いで先に更に続くトンネルに向かっているのでしょう?不安よりも期待・希望といった明るい予感を見る人に与えるのは、やはり出口の先まで明るく見通せているからなのでしょうか。(受験に向けて準備を始める悩み多き学生達には、恐らく描けない絵だと思います…笑 しかし悩み多き人にこそ魅力的かつ希望に満ちた絵にも見えそうです。)




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