株杉の森を

長沼 油彩
 

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは大人クラスの長沼さんの油彩作品です。こちらは岐阜県関市の「株杉の森」を描かれています。杉は通常、真っ直ぐに伸びていきますが、この森には幹が複数に分かれる「株杉」が約50本点在するそうです。作品の中にも、メインとなるうねる様な幹を持つ杉と、まっすぐ天へと向かう杉が見て取れますね。
まず観た者の意識を森へと誘い込む様な空に吸い込まれる構図が大きな特徴でしょう。絵を見ているのに、上を向いている様な錯覚さえ起きてきそうです。株杉の特徴である幹のうねりには、長沼さんらしい赤や青などの強い色が添えられており、よりその特徴が引き立てられています。筋肉の繊維にも見えてきそうなこの描写は、木々が雄大な生き物のようにも見えてきます。
木々の隙間から漏れる光を表現する為、空は薄く絵の具を重ねてぼかされています。反面、手前にいくに従って絵の具の厚みを持たせる事で物理的にも遠近感を演出しています。油彩は絵の具の厚みそのものを使い物の質感や前後を表現できる特徴がありますので、油彩を始めたばかりの方は薄く塗るべき部分と厚く塗る部分、その使い分けを意識されると良いでしょう。
メインとなる杉から目線を下に下ろし、手前の地面も見てみますとかなり細かく手が入れられていることが分かります。草花の隙間の暗い影になっている部分も、単純な黒ではなく様々な色を含ませる事で、暗い中でも色彩を豊かにしています。
 普段はFサイズのキャンバスを使われていますが、今回は横長の画面であるMサイズを使用されていました。横長の画面である分、森の広がりを存分に描くことが可能になったのだと思います。自身が表現したい物の為にキャンバスを効果的に使われていますね。構図は描きたいものを魅せるにあたり非常に重要になってきますので、かなり気を使って配置する必要があります。巨匠はなんの為にその構図にしたのか、意識しながら改めて作品を眺めてみると良いでしょう。

今回は透き通るような空気感が非常によく表現されていると思います。空気という形のないものを表現するのは難しいことですが、それが画面に現れた時は感動してしまいますね。これからの制作も楽しみにしております。

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