意識が表れる

 


大竹です。今回ご紹介させて頂くのは永瀬さんの油彩画です。

左の作品は五年前のリメイク。以前通われていた絵画教室の講師がポージングモデルとなりましたが、今回もその時の写真を参考に制作されています。丸まった女性の形は眠っている様にも、胎児の様にも見えてきますね。背景は女性の意識なのでしょうか、夢も見ないほど深く沈んでいるようです。
以前の作品は暗闇の中に溶け込みそうな、輪郭がぼんやりと光っている夢の中の様な印象がありましたが、今回はより形の細部が描写され、人物が強調されています。身体のバランスも何度も描き直して調整していった為、同じ題材でも以前の作品とはまた違った印象を与えてくれますね。
周りの何もない空間は下地作りを工夫し、ザラザラとしたマチエールが作られてるのが面白いですね。見る角度によって印象が変化していきそうです。こうした余白を多く取る際、油絵は絵の具そのもので質感を作り見所として魅せる事が出来るのが面白いですね。

そして2枚目の作品は頬杖を付き、思案している女性を描いています。背景は女性の心象風景なのでしょう。永瀬さんの作品では度々海が題材となっていますが、作者の原風景でもあるそうです。穏やかに打ち寄せる波は引いては押してを繰り返し、女性の頭の中で波の音を反響させているのでしょう。鑑賞するこちら側にもその心地よい音が流れてくるようです。
砂地の下地を厚めに作り、波打ち際は絵の具を薄くのせ下地が透ける様に見せています。水の透明感が美しいですね。奥は深い藍が続いており、より思考の奥底が続いているように思えます。深く底が見えない部分はきっと無意識の領域なのでしょう。
頬杖をつく女性は輪郭線を強めにして、背景の海との差別化を図っています。描写に違いを持たせる事で、女性と海は同じ空間にあるものではないという事が説明されていますね。

絵の具の質感と、作者のイメージが上手くマッチした魅了的な2作でしょう。


コメント

このブログの人気の投稿

絵画教室アトリエパステル ブログ開設

小学生からの成長

ポチャンと落ちる