奥へ奥へと続く風景


長沼 油彩
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩画2点です。左が猿島、右が熊本県の八角トンネルです。どちらもアースカラーの使い方から同じ作者だと分かりますね。

左の作品。猿島は、東京から1時間ほどの横須賀市沖に浮かぶ無人島で、周囲約1.6km・面積にすると横浜スタジアムのグランド4個分ほどなのだそうです。江戸時代〜太平洋戦争終戦まで軍の要塞として使われており、その痕跡が今も残されています。石造りの壁を覆う苔が長い年月を感じさせますね。人工物の壁の向こうには沢山の木々が空を覆うように伸び、その隙間から木漏れ日が地面に落ちています。とても暖かな温度が感じられる光の色使いですね。木漏れ日は、長沼さんの作品でよく取り扱われるモチーフの1つですが、今回はそれらを形作る木々の形の面白さ、木漏れ日によって浮かび上がる遺跡が主題となっているように見えます。
こうした古びて変色した壁は油彩と相性が良いですね、様々な色を複雑に入り混ぜる事で、ボロボロの質感がよく表現されています。ざらついた岩肌や、ホコリのかぶったレンガの触感が伝わってきます。

右の八角トンネルもまた、かなり奥へと続いていく構図となっていますね。画面の多くを暗い色が占めていますが、作品から暗い印象はなく、トンネルという閉所的な場所ながら開放感すら感じさせる1枚となっています。暗い部分をしっかりと作る事で、光がより強調されているからなのでしょうか。
トンネルの壁面も長い年月を感じさせるツタや苔で覆われ、その細かな色の変化も油彩の良さを最大限に活かして描かれています。油彩の色の重なりにより、アクリルや水彩では中々出せない深みや重みを感じられます。トンネルの内壁も、言ってしまえばただの古びた岩肌なのですが、こうして絵として描き起こされると不思議とその複雑な色の変化が魅力的に見えてきます。作者がその風景を観て感じた色合いを、作品を通じて鑑賞者も観ることができるのが絵画の面白いところですね。
Mサイズのキャンバスが使用されているため、縦長の画面になっているのもまた面白いですね。トンネルの大きさや奥へと続く距離感が、縦長の構図によってよく表されていると思います。八角形のトンネルというのも珍しい題材ですね。

教室でもFサイズのキャンバスを使用される方が多いですが、たまには他のサイズで制作してみるのも面白いかと思います。正方形のSサイズ(スクエア)や最近では側面が分厚いボックスキャンバスや、丸い形などもあったりと様々です。是非支持体の方にも目を向けて、いろいろな構図に挑戦していって欲しいと思います。

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