花に何を見るか

長沼 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。左はクリスマスローズ、右はシクラメンを描いています。

左の作品では、様々なクリスマスローズが所狭しと咲いています。何か1つを主役にするのではなく、画面全体に花が咲いている空間作りがされていますね。
花壇である以上、人の手入れがされている花々ですが、そこから抜け出してきそうな力強さと言うのでしょうか、どこか無秩序な印象もあり面白い画面です。大人しく花壇や鉢植えに収まるのではなく、自由に葉を伸ばして生きている姿は、保護者の扶養の下、自由に活動する学生の様です。そう思うと、なんだかこの場所は学校の様にも見えてきますね。
花びらの特徴を捉え、1株1株を丁寧に描き分けています。俯き気味の萎れた様にも見える表情、まだまだ瑞々しい花びら、これから咲くであろう蕾までと同じクリスマスローズでもその様子は様々で、作品を鑑賞するたびに新たな発見がありそうですね。
ちなみに題材のクリスマスローズ、他にも黄色やピンクといった色も存在する様で、かなりバリエーションに富んでいる花だそうです。

右のシクラメンは先ほどの作品とは対照的に、主役1点に絞って画面が作られています。また、こちらは小さな鉢植えに収められ、室内に飾られています。(そういえば、長沼さんご自身は意図したものではないでしょうが、過去にブログで紹介させて頂いた作品も、ちょくちょく対になる様な2枚を制作されていましたね)
画材は油彩ですが、背景が金箔の様にも見える鮮やかな黄色により、どこか和を感じさせますね。背景の黄金はシクラメンの紅をより一層引き立てています。植木鉢や土台の輪郭は定規で引いた様にピシッと切り取り、人工物の無機質さと花や葉の自然物の柔らかさを対比させているのでしょう。
実は左の作品と比べ、こちらの作品は少しサイズが小さいものでした。しかし、こうして見てみると小さいキャンバスながら目を惹く存在感がありますね。

長沼さんの植物の作品を見るたび、北村佳代子先生(https://www.kayokokimura.com/works.html)の作品と対極にある様に感じます。北村先生の作品は植物の遺影にも感じられる(死を連想させる)のに対し、長沼さんは今生きている新鮮な植物の姿を描いている様に思います。
長沼さんご自身は「もっと花の儚げで繊細な部分を描きたいのに描けない!」と嘆いておられましたが、むしろ伸び伸びと自由に生きている植物の姿を突き詰めていく事で長沼さんの良さを発揮できるのではないでしょうか。






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