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記憶を纏う絵画

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  永瀬 油彩+布・刺繍糸 大竹です。今回ご紹介させていただくのは、永瀬さんのコラージュ作品です。キャンバスの上に油彩と布・刺繍糸が組み合わさっています。 画面にまず強く印象を与えるのは、鮮烈な赤の背景。その中央に描かれる人物のまなざしは静かでありながら、周囲を彩る断片的な布地や糸と呼応し、複雑な感情の揺らぎを漂わせています。使用されている布や刺繍糸は、永瀬さんのかつてのお気に入りの洋服の一部であり、絵の素材であると同時に、かけがえのない個人的な記憶そのものでもあります。 絵画という虚構の世界に、思い出を宿した実際の「モノ」が貼り込まれることで、画面には二重のリアリティが立ち現れます。描かれた人物の表情が誰かを思わせるようでありながらも、布地が持つ物質感によって、個人的な日常や時間の経過が呼び起こされるのです。それはまた、毎年増えていく服に囲まれながらクローゼットをのぞいたときに感じる「過ぎ去った時間への愛着」と「積み重ねられていく日々」の感覚にも重なります。 背景の赤は、そのような断片的な記憶や素材を一つの世界に収める役割を果たし、画面に力強い統一感を与えています。絵画と現実、記憶と現在とを交差させ、見る者に「自分自身の思い出」を呼び覚まさせる魅力を放っているかの様です。

赤と緑のコントラスト

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タイチ アクリル絵の具 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、学生クラスのタイチの作品です。小学生クラスから在籍し、現在中学二年生。 日本を代表する名建築・平等院鳳凰堂を題材に、鮮やかな色彩で描き出しています。十円玉にも刻まれている馴染み深い建物ですが、赤い柱や梁が周囲の豊かな緑と対比され、より一層際立って見えます。自然の緑を背景に、朱色が生き生きと浮かび上がる構図は、観る者に強い印象を与えます。 特に注目したいのは、池の水面に映る鳳凰堂の描写。波立つ水面に揺らぐ姿は、実像とは異なる不思議な美しさを放ち、建築の荘厳さをさらに引き立てています。上部の建物の明快な描線と、下部の水面に広がるにじみやゆらぎとの対比が、画面にリズムを与えています。 もちろん、建物の遠近や細部のバランスなど、まだまだデッサンに未熟な部分は見られます。しかし、それ以上に「見えるものを懸命に捉えよう」というまっすぐな姿勢が伝わってきます。色を重ね、形を探りながら、紙の家にイメージを移そうとする気概が、この作品全体を力強く支えています。 鮮やかな赤と緑のコントラスト、水面に宿るもうひとつの鳳凰堂。その大胆な表現と真摯な取り組みが、中学二年生という若い作家ならではの魅力を放つ作品に仕上がっています。  

それぞれの日常を

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。 浅草の居酒屋の一場面が、実に温かな眼差しで切り取られています。画面に常連が集う古き良き居酒屋の空気が漂い、赤ちょうちんや色褪せた看板、油で黒ずんだ外壁や庇の質感にまで、時間の積み重ねが感じられますね。華やかすぎず、むしろ少し煤けた色合いでまとめられている点が、街場の居酒屋特有の「油で汚れた生活感」を生き生きと伝えています。 また、そこにいる人々は表情を描き込まれていないにもかかわらず、椅子に腰かける姿勢やグラスを掲げる仕草、談笑の身振りなどから、それぞれの感情や会話の気配が伝わってきます。お客さんたちの「今日はここで一息つこう」という安らぎや、店員さんの手際よい立ち働きが、絵全体に小気味よいリズムを生み出しています。視線を移すたびに、一人ひとりの物語が立ち上がるような豊かさが魅力的ですね。 さらに、画面手前を横切る野良猫の存在が作品にユーモアと遊び心を与えています。人間の営みと並行して街の生き物たちもまた日常を紡いでいることを、さりげなく示しているようです。居酒屋という舞台に猫が加わることで、画面がふっと和み、観る者に微笑みを誘う効果を発揮しています。 全体として、筆致の緩急のつけ方が巧みで、背景や建物の重厚な質感と、人々や小物に宿る軽やかな躍動感が響き合っています。単なる風景描写にとどまらず、下町に流れる時間や人々のぬくもり、そして生活の匂いまで描き込まれた作品といえるでしょう。  

アトリエパステル 休校のお知らせ(9月8日・月曜日)

平素よりアトリエパステルにご愛顧いただき、誠にありがとうございます。 このたび、私事で大変恐縮ではございますが、母方の祖母が永眠し、葬儀のため、 9 月 8 日(月)を休校とさせていただくこととなりました。 皆さまには急なお知らせとなり、ご迷惑をおかけいたしますことを心よりお詫び申し上げます。 あわせて、来週の 9 月 15 日(月)は祝日のため休校となります。結果として 2 週続けてのお休みとなり、大変申し訳ございません。 なお、休校となりました分のお月謝につきましては、日割りにて計算し、来月分のお月謝より割引させていただきます。 また、 9 月で退会予定の方につきましては返金にて対応させていただきます。 上記の内容と同様のメールを月曜日クラスの生徒さんへお送りしています。ご確認頂けましたら、お手数ですがご返信いただけますと幸いです。ご返信がなかった方には、念のためお電話にてご連絡させていただきます。 皆さまには重ねてご迷惑をおかけいたしますが、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

君がいた夏は…

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大竹です。昨日から近所の堰神社で盆踊りのお祭りが開催されていますね。夏らしい風景です。幼児クラスでは、お祭りにちなんで屋台で買った好きなものを食べている自分を描いていきました。顔を大きく描き、口を描き、好きな食べ物を描いていきます。皆ちゃんとお祭りで売っている食べ物をチョイスしているので、やはり楽しい記憶が残っているのでしょうね。(左からポップコーン、わたあめ、焼きそば、ホットドッグです)洋服も浴衣スタイルで、自分で好きな柄を描いています。背景には打ち上げ花火を描いて完成!カラフルで清涼感ある作品になりましたね。 この後は粘土工作をして現在乾燥中…来週の着彩をお楽しみに!  

季節を描き、心を映す

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。 まずは左のひまわりの作品。ペインティングナイフを用いて厚く塗り重ねられた絵の具の質感が、力強い陽光と大地の熱を感じさせ、画面全体に生命力と躍動感が漲っています。背景には大胆な筆致で様々な色が重ねられ、絵の具の盛り上がりやかすれが、風や光の動きを感じさせるような、抽象的な魅力をもたらしています。 また、花々の構図には物語性が感じられます。画面下部のひまわりたちは、それぞれが異なる方向を向き、風に揺れながら自由に咲いているようにも見えます。その中で、最も背の高いひとつだけが、あたかもその下に咲く花々を見守るように、やさしく視線を落としているのが印象的です。 通常、ひまわりは太陽を見上げる花ですが、このひまわりはまるで太陽ではない”誰か”に向かってその顔を向けているかのようです。まるで年長者が若者たちを見守っているかのように見えてきませんか?毎週お孫さんがご自宅に遊びにいらっしゃると伺いましたが、もしかするとそうした日常の温かな記憶が無意識のうちに作品に反映されているのかもしれませんね。 筆とナイフを自在に使い分け、感情と観察を巧みに織り交ぜた表現は、長沼さんの絵画歴の豊かさを裏付けるものです。ひまわりという身近な題材から、見る人の想像力をかき立てるストーリーを生み出している点に、深い魅力を感じます。 そして右の作品は、岩手県にある小岩井農場の一本桜を描いています。画面中央に佇む満開の桜が、残雪を抱いた山々と澄んだ青空を背景に、堂々と咲き誇っています。自然の雄大な空間を感じさせつつも、その中で桜の存在がしっかりと主張されているのは、絵の具の重ね方に工夫が凝らされているからでしょう。花の部分には、やや厚みを持たせるように絵の具が乗せられており、遠景でありながらしっかりとした質感と存在感を放っています。 空は丁寧なグラデーションで美しい真っ青に仕上げられ、空の青と、手前の木々や地面の緑、そして桜の柔らかなピンクが絶妙なバランスで画面を彩ります。こうした色彩の調和が、春の訪れを鮮やかに印象づけています。 また、遠くにそびえる山肌の描写も魅力的ですね。残雪がまだ多く残る山の陰影や稜線の表現には、長年絵筆を握ってきた長沼さんならではの観察力と描写力が感じられます。実景を丁寧に見つめ、その印象を一つ一つ画面に再...

10月・11月の休講・振替日についてのお知らせ

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大竹です。 この度、2025年10月・11月の開講日に一部変更がございますので、お知らせいたします。 振替や休講の日程につきましては、上記のプリントをご確認ください。こちらはお月謝袋とあわせて、教室でも順次配布しております。 ご不明な点などがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。 ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。