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8月, 2023の投稿を表示しています

白黒でどれだけ色を作れるか

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相澤 鉛筆   大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、大人クラスの相澤さんの鉛筆画です。こちらは写真を見ながら制作されています。 水面の鏡に大きな双子の山と、その間を鷹が飛んでいます。雄大な自然を自由に飛ぶ鳥の自由な姿は観る人に開放感を与えてくれるようですね。空の僅かな色の変化や、雲の柔らかい表情を鉛筆と練りゴムを使い丁寧に追っています。水面に映る山の揺らいだシルエットも美しく、鉛筆の濃さを使い分けて丁寧にグラデーションを作られています。デッサンでもそうですが、白とグレーと黒の限られた色の中でどれだけ色のバリエーションを作れるかがポイントとなってきますね。鉛筆の色の濃さを使い分けたり、消しゴムや練りゴムで消したり擦ってボカしたりと、白黒だけでもかなり変化を作ることが可能です。 見所である山肌もより細かく描写されていますね。陽光が当たっている部分の色合いも美しく仕上がっています。陰になる暗い部分も、単調に真っ黒にするのではなく、黒の中にも細かい色の変化を作っています。それによって画面の中で1番存在感のある仕上がりとなっていますね。主役以外も隅々まで丁寧に仕事が行き渡っており、作者の制作姿勢が作品を通じて見えてくるようです。絵画制作は本当にその人の性格や人柄が表れてくるのが面白いですね。 是非色々な画材や題材に取り組み、制作を楽しんで頂けたらと思います。次回作も楽しみにしております。

ビールなくして人生なし

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柳谷 アクリル 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは柳谷さんのアクリル画です。ご友人二人をモデルに制作されています。 𝓝𝓞 𝓑𝓔𝓔𝓡 𝓝𝓞 𝓛𝓘𝓕𝓔の文字にもありますように、お酒好きの二人なんでしょう。大きなビールジョッキに笑顔のサムズアップがなんとも楽しい気持ちにさせてくれます。背景までもがビールカラーで染められており、その反面人物はグレースケールで仕上げられています。身体の奥までアルコールが染み渡っているようですね。 アトリエだけではなく、ご自宅にまで持ち帰って修正を繰り返して制作されていました。乾燥が早いアクリル絵の具は手早く描き進められるのが良いですね。あえて人物をグレースケールで制作されているところも面白く、強調させたいビールがより印象付けられます。 グレースケールで制作していく分、より白〜グレー〜黒の色幅を増やし、単調にならないよう描かれています。顔の凹凸、服のしわ・模様、手の表情といった細部までを白と黒の絵の具で表現していきました。人物、しかも2人とかなり難しい題材だったかと思いますが、よくぞここまで描き切りましたね! 背景の文字も当初はありませんでしたが、頭上の空間を活かしたいと言う事で後から入れられています。フォントもいくつかの候補を検討して選びました。人物は元の写真を白黒に変換して印刷して用意するなど、柳谷さんは制作前の資料の準備をしっかりと行い作業されています。こうした準備(資料集め、取材)は制作する上で非常に重要であり、私も大学では制作よりもその準備に時間を掛けろとまで言われていました。自分が何を描きたいのか、その為には何が必要なのか見失わない為にも参考資料は大事になります。(学生達にも資料を集めてよく見て描くように口を酸っぱくして指導しています) 次回作も楽しみにしております!

ペンギンの身長は?

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大竹です。幼児クラスでは、南極にいる皇帝ペンギンの親子を制作しました。白いクレヨンで氷河を描き、青い絵の具で白い画用紙から形を描き起こしていきます。爽やかな青色が涼しげで夏らしいですね!絵の具が乾くのを待つ間、別紙にクレヨンで皇帝ペンギンの親子を描いていきます。皇帝ペンギンは100cm~130cmにもなるそうで、ちょうど幼児たちの身長と同じくらいの大きさです。そう思うとかなり大きい動物ですね。赤ちゃんでも犬や猫くらいの大きさがあるのでしょうか。そんなペンギンに思いを馳せつつ、色や模様の特徴を捉えて描いていきます。完成したらハサミで周りを切り取り、最初に作った南極に貼り付けたら出来上がりです!  可愛らしい親子が並びました。並べると群れのようですね! ちなみに、寿命も長く20~30年も生きるそうです。何歳で成鳥になるんでしょうね?

揺らぐ景色のトンネル

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩作品です。新潟県の十日町市にある清津峡渓谷のトンネルを描いています。このトンネル内部はミラー状になっており、床は薄く水が張っている為に周りの景色が映り込むそうです。 トンネル内部の写り込みや水面の揺らぎ、そしてトンネル向こうにある青空が美しい1枚ですね。水面の景色が揺らぐ様子は特に力を入れて描かれており、この洞窟が持つ独特な時間と空間が表現されています。全体的にサイドが低い色合いで作られているので、中心の青空が鮮やかに引き立っていますね。奥の風景も右側が暗く、左側が明るく作られているのもかなり思い切っていますね!油彩で暗い部分を作るのは難しいのですが、他の色を混ぜて黒を弱めたり(チューブからの出したそのままの色では強すぎる為)、黒の上から他の色を重ねたりして調整されています。トンネルの先はフェンスが設けられており、おそらくその先の道はなく渓谷になっているのでしょう。トンネルの先が崖になっている、というのも珍しい風景ですね。奥で風景を眺めている観光客たちも、その光景に圧倒されているのでしょう。 天井に写る捩れるような景色も面白いですね!一見苔の様にも見えますが、よく見てみると渦を巻く様に色が入り組んでいるのが分かります。向こうの風景の崖の色合いもよく観察して作られています。こんな険しい断崖をトンネルから望めるというのも面白い場所ですね。題材も合間って、不思議な世界への入り口の様にも思えてきます。天井にも空の水色が入っていますが、これは青空が水面に写り込み、その光が更に天井に反射し、最後には我々の目に入ってくるという光のリレーになっています。今回は長沼さんの中に入った風景が、更に絵画に描き起こされて鑑賞者の目に入っているので、そのリレーは更に複雑になっていますね。 この風景は、四季折々でかなり様変わりするそうで、秋になれば紅葉でオレンジ色に、冬になると雪が積もり洞窟内も真っ白になる様です(すごく寒そう…)。モネの積みわらのシリーズの様に、同じ場所・題材を時間や季節の変化をテーマに追っていくのも面白そうですね!