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4月, 2023の投稿を表示しています

初めての油絵

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  マホ 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、学生のマホの作品。油彩は2枚目ですが、モチーフをセットしたアカデミックなものは今回は初めてです。 下地を作り、オイルで絵の具を溶き、毎回少しずつ薄く塗り重ね色に深みを出していくやり方に挑戦しています。デザイン系の学校に通っているため、普段はアクリル絵の具を使用することの方が多く、ほぼ初めて触れる油絵には苦戦していました。 まだ絵の具に振り回されている様には見えますが、慣れない事に腐らず、光を意識しモチーフを捉えようとする姿勢が見て取れる好感が持てる1枚です。絵の具の重ねによる透け感でワインボトルを描いたり、光によって浮き上がる松ぼっくりの形を描き出しています。りんごも、ぬるっとした質感にはなってしまいましたが、何度も色をのせては描き直しの試行錯誤を重ねていました。布のしわも、印象派の画家のタッチを参考にしながら色を置いていき、立体感を作っています。背景は思い切って暗くして、窓の外からの自然光が際立つ様にしています。暗い中から光でモチーフを描き起こす様な表現が味わい深く、絵の具に慣れていけばもっと発展していきそうです(本人的には、しばらくは油絵はこりごり!かもしれませんが…笑) 得意なものを見つける事も、反対に不得意なものを見つける事も重要な経験だと思います。苦手ということはつまり自分の弱点ですので、そこが新たな自分の課題にもなるでしょう。それを克服するもよし、苦手なものは苦手なものよしてバッサリ切り捨て、得意な部分を伸ばすのもよしです。自分に必要なものは何か、得意不得意の中から判断していって欲しいと思います。

丸がいっぱい

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、 小6の子供達が卒業し、4月からは学生クラスへ移籍となりました。普段の学生クラスは、自分でやりたい事を好きなだけ時間をかけて取り組むことができますが、今回は最初の授業という事で球体のデッサンを全員で行いました。 光、ハイライト、陰、反射光、影の色の変化をよく観察し、鉛筆の濃さを使い分けながらミッチリと2時間かけて2枚制作しました。グラデーションを丁寧に作る事で、黒の色が美しく見えてきます。逆に、雑に適当に塗ってしまうと、汚れの様な汚らしい黒に見えてしまいます。 出来上がりを並べてみると、さすが中学生になったということもあり、中々の出来栄えです。本人たちの中でも、今までで一番上手く描けたのではないでしょうか? 小学生クラスでは1ヶ月で1つの作品を制作するので、時間内に仕上げるため私に急かされ尻叩きされる事も多々ありますが、これから学生クラスでは自分が納得いくまでじっくり制作していってくれたらと思います。  

明るい予感

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  柳谷 アクリル 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、柳谷さんのアクリル画です。娘さんをモデルに、銀杏並木の風景を描かれています。 身内、しかも女性・娘となりますと”そっくりに、かつキレイに!”とお父様のプレッシャーもあったかと思います。特に顔の方は何ヶ月もかけて修正を繰り返し、納得がいくまで調整し続けていました。振り返る顔は正面の顔と比べ傾いているので、バランスを取るのも難しかったかと思います。その甲斐あって、ご家族にもとても喜んで頂けたそうです。こちらに振り向くポーズは浮世絵の”見返り美人画”を連想させますね。 不透明・半透明のアクリル絵具を使い分けて制作されていました。水彩よりも隠蔽力が強く、油絵よりも乾燥が早いので修正が容易な部分もアクリル絵具の特徴ですね。 色彩豊かなイチョウの背景に、娘さんの無彩色の服の対比で主役がイチョウの吹雪にも埋もれずに目立てていますね。このイチョウ吹雪も、作者が制作当初から描きたいとイメージされていたものだそうです。現在はちょうど桜が散ってゆく時期ですが、秋の黄色い落葉もまた華やかで美しいですね。 イチョウ、空、人物が明るい色で作られている分、地面の暗い焦げ茶が入る事で画面全体が引き締まっていますね。明るい部分をより明るく見せたい場合、暗い部分を作って対比させる事でも効果的に色を見せることができます。茶系の色にする事で黄色とも馴染んでいますね。良い色の選択だと思います。 奥へと続く銀杏並木の道は、主役の人物の明るい未来を予感させます。そう考えると、イチョウたちもまたそれを祝福しているかのように見えてきますね。モデルとなった方も、この作品を見るたびきっと明るく前向きな気持ちになれるでしょう。

奥へ奥へと続く風景

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長沼 油彩 大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、長沼さんの油彩画2点です。左が猿島、右が熊本県の八角トンネルです。どちらもアースカラーの使い方から同じ作者だと分かりますね。 左の作品。猿島は、東京から1時間ほどの 横須賀市沖に浮かぶ無人島で、周囲約1.6km・面積にすると横浜 スタジアムのグランド4個分ほどなのだそうです。 江戸時代〜太平洋戦争終戦まで軍の要塞として使われており、その痕跡が今も残されています。石造りの壁を覆う苔が長い年月を感じさせますね。人工物の壁の向こうには沢山の木々が空を覆うように伸び、その隙間から木漏れ日が地面に落ちています。とても暖かな温度が感じられる光の色使いですね。木漏れ日は、長沼さんの作品でよく取り扱われるモチーフの1つですが、今回はそれらを形作る木々の形の面白さ、木漏れ日によって浮かび上がる遺跡が主題となっているように見えます。 こうした古びて変色した壁は油彩と相性が良いですね、様々な色を複雑に入り混ぜる事で、ボロボロの質感がよく表現されています。ざらついた岩肌や、ホコリのかぶったレンガの触感が伝わってきます。 右の八角トンネルもまた、かなり奥へと続いていく構図となっていますね。画面の多くを暗い色が占めていますが、作品から暗い印象はなく、トンネルという閉所的な場所ながら開放感すら感じさせる1枚となっています。 暗い部分をしっかりと作る事で、光がより強調されているからなのでしょうか。 トンネルの壁面も長い年月を感じさせるツタや苔で覆われ、その細かな色の変化も油彩の良さを最大限に活かして描かれています。油彩の色の重なりにより、アクリルや水彩では中々出せない深みや重みを感じられます。トンネルの内壁も、言ってしまえばただの古びた岩肌なのですが、こうして絵として描き起こされると不思議とその複雑な色の変化が魅力的に見えてきます。作者がその風景を観て感じた色合いを、作品を通じて鑑賞者も観ることができるのが絵画の面白いところですね。 Mサイズのキャンバスが使用されているため、縦長の画面になっているのもまた面白いですね。トンネルの大きさや奥へと続く距離感が、縦長の構図によってよく表されていると思います。 八角形のトンネルというのも珍しい題材ですね。 教室でもFサイズのキャンバスを使用される方が多いですが、たまには他のサイズで制作してみるのも面白いかと思...

小学生の印象派の模写

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大竹です。3月の小学生クラスでは印象派をテーマにモネ・セザンヌ・ルノワールの作品の模写をしていきました。どうですか?大人の作品と並べても引けを取らない出来栄えではないでしょうか。 アクリル絵の具で下地を塗り、その上から水彩で色をのせていきました。印象派の特徴である豊かな色彩と、点描画のような筆使いを再現しています。どの作品も家に飾ればお部屋を華やかにしてくれそうですね。 授業ではモネ・セザンヌ・ゴーギャンのみの紹介となりましたが、いずれ機会があれば他の画家にも触れていって欲しいと思います。 ちなみに一番人気はセザンヌの『松の木のあるサント・ヴィクトワール山』でした。

自然物、人工物

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大竹です。今回ご紹介させて頂くのは大人クラスの長沼さんの油彩作品です。  横浜にある旧横浜商工奨励館を描いています。1階がフランス料理店だそうで、中には結婚式場として使われる施設もあるそうです。高級ホテルの入り口のような格式高い作りと、それに負けじと金色に輝くようなイチョウの組み合わせが調和した1枚となっています。 建物にくっ付きそうなほど伸びた枝は、建物にまでその黄色が反射しています。日差しの強い日だったのでしょう、地面に落ちる陽光はその日の温度まで伝えてくれるようです。 太陽の光を受けて輝くイチョウを表現するために、暗い色味の面積が多く作られています。光を描きたい場合、光を加筆するだけではなく影をより暗くする事で、対比によって光を明るく見せる事が出来ます。地面にこれだけの影を落とすのですから、相当葉が茂っているのでしょうね。イチョウの色は原色を思わせる強い黄色が印象的ですが、その反面建物の方は絵の具を練りに練った様な色合いで作られています。絵の具をオイルを多めに溶いて薄く色を塗り重ね、色の深みをじっくり引き出しているのでしょう。少しずつ変化する色彩を楽しむ事が出来ます。 右側はカッチリとした人工物、左側は柔らかな自然物がまるで対立するかのように向かい合い、その間には両方を享受する我々人間が歩いています。私はあまり自然が身近ではなかったので、どちらかというとフランス料理屋さんに惹かれてしまいますが、都会の情報量に疲れた方は温かみのあるイチョウの木が目に入るのでしょう。みなさまはどちらに惹かれましたか?