投稿

11月, 2022の投稿を表示しています

強烈な色彩・不安定なリズム

イメージ
油彩 30号 大竹です。今回ご紹介かせて頂くのは学生クラスのカナコさんの油彩作品です。 大学の課題として提出するために描いていました。白い陶器のものを明暗または色彩を重視して絵画制作するというもので、キャンバスも30号とかなり大きなものとなっております。カナコさんは色彩感覚に優れているので、今回は色彩を重視した制作となりました。エネルギッシュな暖色の色使いの中に影として寒色が使われているのがなんとも魅力的で強烈な印象を与えます。一定ではない筆使いもまた面白いですね。それぞれ物として形を与えられていながらも、その色彩だけを見ていると別の景色が見えてきそうです。テーブルや陶器は細かい色の変化と筆使いに対して、背景は単調な平面に仕上げて対比となっており、全体のバランスが取られています。この背景の色幅も一定ではなく、歪みを持って描かれています。力強い色彩と、この不安定にさえ見えてくるようなリズムの組み合わせが不思議と調和していますね。 今後も色彩をテーマに制作を続けていく予定ですので、どのような作品が出来上がっていくのか楽しみですね。  

小学生油絵2022!part5

イメージ
大竹です。小学生の油絵紹介part5です。毎回じっくり書かせて頂いているので、だいぶ時間が空いてしまい申し訳ないです。 今回は中学年から高学年への移り変わり、4~5年生の油彩をご紹介します。 ゆうか(左上/4年) 気持ちよさそうに原っぱに横たわるわんちゃんがこちらをじっと見つめています。ピンと立った耳が可愛らしいですね。体毛の細かな変化をしっかりととらえ描写できています。小学生のうちは濁った色を嫌い原色の鮮やかな色を好む傾向にありますが、ゆうかさんは混色された鈍い色やグレートーンの色を上手く使っていますね。中々渋い色使いです。背景の柔らかな緑の色使いも、このワンちゃんの穏やかな心の内が投影されているようです。奥の花や名前の赤がアクセントになっており、緑や黒などの色合いの中で画面をキリッと引き締めてくれています。しかし制作中は講師(私)vs作者のバトルがあり、「こうした方がもっと良くなる!」という私と「ヤダ!!直さない!!!」とこだわりを見せる作者で何度も描き直しが起こっておりました。笑 そんなバトルが繰り広げられながらも、おしゃべり好きでいつも教室を明るくしてくれる作者の人柄が表れているかのような、穏やかで優しい1枚となりました。結果オーライ◉ ゆうし(左下/4年) 雄大な滝と奥にビルが立ち並ぶ、ちょっと不思議な取り合わせの風景です(FFの世界みたい!) 空の暗雲も紺色や青も混じった美しい色合いに仕上がっていますね、素晴らしいです。筆でポンポンと叩くように絵の具を乗せていったので、雲のモコモコした感じもよく表現されています。雲の合間から覗く夕焼けも光の柱の様で幻想的ですね。雲をグッと暗くしてある分、夕焼けの光がより輝いて見えてきます。 大量の水が落ちていく滝の勢いや、水のしぶきで霧がかかっているかの様なぼんやりとした空気もよく表現できていますね。滝の深い藍色と、流れる滝のストライプの色合いがまた魅力的ですね。薄い水色から深い藍色まで、これだけの種類の青色を作れればもう描けない色はないでしょう。色への感覚も良いのでしょうね。 4年生で遊び盛りであるお年頃ながら、普段の教室での制作中の雰囲気はまるで寡黙な職人のようです。これからの作品も楽しみにしております。 あやね(右下/4年) ハリネズミのコロンとした形がなんとも可愛らしいですね。ハリネズミの針の色も黒や赤茶色、白や...

車シリーズ第5弾

イメージ
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、学生クラスのコウタロウさんの作品です。アトリエでは様々な画材を使用してひたすらに車を描き続けていますが、今回は色鉛筆画に挑戦しました。 前回の記事が6月 でしたので、ほぼ半年かけての制作でした。色鉛筆は水彩や油彩などに比べてやや弱い印象にはなりますが、細かな描写や画材のコントロールもし易いので扱い易い画材ですね。 ボディの凹凸による明暗と色の変化も色を重ねて細かく追っていきます。色を重ねる際は、別紙に色を試し書きしてから塗る事を心がけて制作していってました。黄色いボディの濃い影の部分には同系色の濃い色である茶色ではなく緑が入っているのも良いですね。色鉛筆でツルッとした金属の質感を表現すためには、紙のザラザラした面を潰すため線を沢山走らせなければなりません。色を塗り重ねると共に、質感を出していく作業も並行して行なっていきました。 地面のコンクリートもただ灰色で塗るのではなく、青や黄色等を織り交ぜて単調にならない様工夫しています。 制作中も車好きの大人の方と車トークを交わしたりしておりました(話の内容は私にはサッパリ!笑)。共通の趣味嗜好というものは、年代関係なく人を結んでくれるものですね。 まだ形の歪みや描写の甘さもありますが、やはりモチーフへの愛は十分に伝わってくる作品でしょう。でなければ、半年間も同じ作品に向かい続けることは出来ないでしょう。 実は中3の受験生ですが、「勉強は大丈夫?受験終わるまで休まなくても平気?」と聞いたら「ずっと遊んでばっかりだったので、その時間を削っているので大丈夫です」とのこと。上手いこと生きている彼ですので、アトリエでの制作が程よい息抜きになっていたら幸いです。  

コアラの親子と乗り物

イメージ
大竹です。幼児クラスのお絵かきのカリキュラムでは、コアラの絵を描いていきました。「コアラはユーカリという毒がある葉っぱ食べて、お母さんコアラは毒がなくなったうんちを子どもに食べさせます。まだ毒に強くない子どもは、そのうんちを食べて強くなります」と話すと「ええ〜うんちを食べるの?!」とみんなビックリ。そんな導入の後は木にしがみついてる親子コアラを描いていきます。 今回のポイントはしっかりと木に体がくっついている事。お腹や顔を密着させ、しっかりと木にしがみついている様にします。木を塗る時もコアラを塗り潰さない様、気をつけて進めていきました。背中の子どもコアラは、お母さんと同じグレーだとくっついてしまうので、黒のクレヨンで輪郭を取り別々になる様に描きました。中々重なりを理解するのは難しいですが、毎回少しずつ重なりのある絵を描いていっているのでみんな上達してきています! なんだかコアラのマーチが食べたくなってきちゃいますね。 その後は乗り物をテーマに車と飛行機を描きました。車は一見複雑そうに見えますが、長方形と台形に分解して、簡単な形の組み合わせとして描いていくと簡単に描く事が出来ます。飛行機の方も斜めの形が難しかったですが、いつもの真横から見た飛行機よりもリアルに描けましたね!色は自由に塗っていますので、アメリカのおもちゃの様な派手さがまた可愛らしいですね。こうした複雑に見えるものも簡単な形から描いていく、といった練習も続けて行きたいと思います。  

株杉の森を

イメージ
長沼 油彩   大竹です。今回ご紹介させて頂くのは大人クラスの長沼さんの油彩作品です。こちらは岐阜県関市の「株杉の森」を描かれています。杉は通常、真っ直ぐに伸びていきますが、この森には幹が複数に分かれる「株杉」が約50本点在するそうです。作品の中にも、メインとなるうねる様な幹を持つ杉と、まっすぐ天へと向かう杉が見て取れますね。 まず観た者の意識を森へと誘い込む様な空に吸い込まれる構図が大きな特徴でしょう。絵を見ているのに、上を向いている様な錯覚さえ起きてきそうです。株杉の特徴である幹のうねりには、長沼さんらしい赤や青などの強い色が添えられており、よりその特徴が引き立てられています。筋肉の繊維にも見えてきそうなこの描写は、木々が雄大な生き物のようにも見えてきます。 木々の隙間から漏れる光を表現する為、空は薄く絵の具を重ねてぼかされています。反面、手前にいくに従って絵の具の厚みを持たせる事で物理的にも遠近感を演出しています。油彩は絵の具の厚みそのものを使い物の質感や前後を表現できる特徴がありますので、油彩を始めたばかりの方は薄く塗るべき部分と厚く塗る部分、その使い分けを意識されると良いでしょう。 メインとなる杉から目線を下に下ろし、手前の地面も見てみますとかなり細かく手が入れられていることが分かります。草花の隙間の暗い影になっている部分も、単純な黒ではなく様々な色を含ませる事で、暗い中でも色彩を豊かにしています。  普段はFサイズのキャンバスを使われていますが、今回は横長の画面であるMサイズを使用されていました。横長の画面である分、森の広がりを存分に描くことが可能になったのだと思います。自身が表現したい物の為にキャンバスを効果的に使われていますね。構図は描きたいものを魅せるにあたり非常に重要になってきますので、かなり気を使って配置する必要があります。巨匠はなんの為にその構図にしたのか、意識しながら改めて作品を眺めてみると良いでしょう。 今回は透き通るような空気感が非常によく表現されていると思います。空気という形のないものを表現するのは難しいことですが、それが画面に現れた時は感動してしまいますね。これからの制作も楽しみにしております。

大きな木

イメージ
大竹です。幼児クラスの工作では紅葉の木を制作しました。ダンボールと包装紙を使用し、枝を1本1本捻って作っていきます。ねじりがまだ上手くできない子も、コツを教わってやっていくと直ぐに出来る様になっていました。枝には赤、黄、オレンジの画用紙をちぎった葉っぱをくっつけていきます。地面にも少し貼り付けて落ち葉になっているのも可愛らしいですね。木には3色の果実を折り紙で作って実らせました。 お絵かきの方では先ほど作った木を見上げている自分の絵を描きました。枝は先端がとんがっている事、画面からはみ出すくらい大きく書く様にして立派な木を描いていきます。葉っぱの赤、オレンジ、黄色は薄い色から塗り重ねていく様に指導しています(濃い色から塗ってしまうと、後から薄い色が塗れなくなってしまう為) 秋らしい色合いの作品が完成しました。  

小学生油彩2022!part4

イメージ
寒さが増してきましたね!子供達も流石にもう半袖や半ズボンは辛いんじゃないかな?と思っても、まだちらほら見られます。 今回は3年生と4年生の油絵をご紹介させていだたきます。 ゆうり(左上・3年)じっくりじっくりと色を作り9月まで制作を続けておりました。木の表皮の質感は、筆をキャンバスに押し付けるように塗る事でけばけばした筆跡を残し、それによってざらついた手触りを作っています。ただ茶色で単調に塗るのではなく、赤や黄色、白を入れたりして複雑な表情が作られています。背景の色合いも実に美しいですね!入り組んだ色は離れてみるとそれらが響き合って美しいまとまりとなり、この絵の魅力の1つとなっていますね。何もない空間も、色や絵の具の使い方で魅力的に見せる事ができます。本来、メインの動物に比べて背景は楽しくないしやる気も出にくい部分ですが、そうした部分まで手を抜かずに制作しているのが分かりますね。 豹の体毛の模様や色の移り変わりなども、まだ3年生ながら職人さながらの仕事ぶりです。豹の模様は単純な水玉やボーダーではなく、意外と複雑な形をしています。それらもよく観察し、丁寧に描かれていますね。こちらを見つめる瞳がオッドアイ(瞳の色が左右違うこと)に描かれているのも神秘的で面白いです。 4年生になればもっと観察力やデッサン力も付いてくるので、自分が思った様に描けるものが多くなると思います。ゆうりさんも、自分の成長を楽しみにしてて下さいね。 あすか(左下・3年)年長さんの頃からパステルに通い始め、今年でパステル歴4年の実力を見せてくれました。 昨年からさらにパワーアップ しているのがお分かりになるかと思います。 羽の部分は筆の跡を残すように絵の具をたっぷり置いていき、立体感までも表現しています。カラフルな色合いも賑やかでいいですね!1つ1つの色が鮮やかに見えています。羽は色を混ぜずに、チューブから出したままの色を使ったのでしょう。混色をせずに塗っていくと、色が強すぎてバチバチとした画面になってしまいますが、あすかさんの油彩はバチっと色を見せて目立たせたい部分(鳥)と、混色をして色を鈍くし、目立ちすぎないようにする部分(背景の木や空など)で描き分けられているのでバランスの良い作品となりました。そんな立派な羽毛を持っていながらも、持ち主の表情はぽやんとしており、そのギャップもなんだか愛らしいです...